それは朝、教室に向かっている最中だった。

私はいつも、人道の少ない廊下を通り教室に向かっている。

なぜなら……男の子が苦手だから。



私にとっては、何よりも怖い存在。

だから……極力人気のない道を通っていたのに……



「杉宮(すぎみや)さん!」



背後から聞こえた私の名前を呼ぶ男の子の声に、思わず足がすくんだ。


ひっ……!だ、誰……!?

振り返るのも怖くて、走って近くの空き教室に逃げる。

けれど、鈍足の私が逃げ切れるはずもなく……教室に逃げ込んだせいで、むしろ自分から逃げ場を塞いでしまった。

追いかけてきたのは……面識のない男の子。


顔を赤く染め、じりじりと詰め寄ってくる男の子に、涙がじわりと滲んだ。