行ったり来たり。

揺れ動く心を 抱えたまま。


付き合って 2年が過ぎた春。

博幸に 異動の辞令が出た。


今の支店に 勤務して5年。

そろそろ 異動だとは 思っていたけれど。

私は 博幸から聞いた時 涙が溢れた。


「大丈夫だよ 雪穂。何も 変わらないから。」

博幸が異動する 城山支店は 隣町で。

むしろ 私のアパートには 近くなる。


「でも。私 博幸が見ていてくれるから 仕事 頑張れたのに…」

溢れる涙を 拭うことも できずに 私は言う。

「これからだって 俺は 雪穂を助けるから。泣かないで。」

奥さんよりも 長い時間 一緒にいることが

私の 支えだったから。


離れてしまえば 博幸の心も 離れてしまう。

こんなに 不確かな 関係なのに。


泣きじゃくる私を 博幸は じっと抱き締めて。

「俺だって 会社で雪穂に会えないの すごく 寂しいんだよ。」

博幸は そう言って 私の耳を 甘く噛んだ。