「すごいね……ハァッ……あんな、逃げ道まであったなんてビックリだよ!」
剣崎から逃げるため死ぬ物狂いで走ったせいか、胸は酸素を求めて大きく波打っていた。
「あの螺旋階段はルート2。万が一、さっきの出口で待ち伏せされてた時のための逃げ道だ。バイクじゃ中までは入って来れないからね」
「そこまで考えてたんだ……」
鷹村くんが言ったように逃走の名人だけあるのかもしれない。
「でも必死だったよ。お前のことは、死んでもアイツに見せてやんないって」
「っ、あ、ありがと……、」
黒塗りの車も追ってこなかったし大丈夫……だよね?
あのあと螺旋階段を登って、じっとりした廃ビルの廊下らしき場所を通った。
それからまた崩れそうな階段を無我夢中で下りると、そこは違う出口に繋がっていて……
迷い込んだ知らない世界から飛び出してきたみたいだった。
剣崎がまだ近くに潜んでいるような気がしたけれど、難を逃れ、白坂くんの住んでいる10階建てのマンションに着いたところだ。