『また会おうね、約束だよ』



夕空の下、小さな町を見下ろして誓った約束は、今もまだこの胸に残っている。

屈託のない笑みを見せる彼女に、思ったんだ。

いつかまた会えるときには、胸を張れる自分でいたい。

彼女の手を自ら引けるような、そんな存在になりたいと。





「……長、副社長!」



呼ばれた名前に、ふと我に返る。

見慣れた支配人室の中、目の前には困った顔の社員がこちらを見ていた。



「……悪い、考え事してた」

「大丈夫ですか?こちら、本社からの通達の確認お願いします」

「あぁ」



社員は書類を手渡すと部屋をあとにする。

室内に自分ひとりになったところで、「はぁ」と自然に溜息が出た。



またぼんやりしてしまっていた。手元の業務もまったく片付いていない。

仕事中にこれはまずいな。

そう分かっているのに、一向に仕事に集中できない。



というのも頭の中は春生のことでいっぱいで、気付くと彼女のことばかりを考えてしまうから。