清貴さんと交わした初めてのキス。

そこには特別な言葉も、抱きしめることもない。

だけどこれまでで一番、彼を近くに感じることができた。





もうすっかり梅雨もあけ、からっと晴れたある日の午後。

私はひとりぼーっとしながら、窓の外を見つめていた。

頭の中は、先日の清貴さんとのキスのことばかりがめぐっている。



清貴さんと、キス……しちゃった。

あれからもう3日は経つというのに、いまだに私はあの時のことばかり考えてしまう。



あの時は、キスをしてすぐ冬子さんたちがやってきてそれ以上の会話もまともにできなかった。

それから冬子さんの提案でみんなで食事をとって、帰路について……帰りの車内ではもうすっかり清貴さんはいつも通りの様子だった。



一方の私は、未だにいつも通りになれていない。

一緒にいると緊張してしまうし、ひとりでいると思い出してにやけてしまうし……。



でもあのタイミングでキスなんて……どうしてしたんだろう。

清貴さんも私のことを女性として意識してくれたってことかな。



考えるとまた緩んでしまう顔を両手で押さえる。

するとふいに部屋の隅に置かれた紙袋が目に入った。



「あれ、これなんだっけ……」



不思議に思いながら紙袋の中をのぞくと、そこには『伊香保名物 温泉まんじゅう』と書かれた箱が入っていた。