【もしもし】

「もしもし、聞こえてますか?」

トントンとドアを叩きながら、外から誰かが私に声をかける。

私は眠ったふりを続ける。

心の中で、

「お願い、誰か助けて。早くいなくなって」

と願いながら。

「もしもし、もしもし。大丈夫。何もしないから。ドアを開けて」

そいつは淡々と女の声で言う。

そのまま20分近くが過ぎ、

「京子着いたぞ。早く降りろ」

お父さんが声をかける。

「待ってお父さん。絶対に開けちゃダメ…」