放課後1人で帰り道を帰っていた。
路地裏へ出た時、猫のにゃーという声が聞こえた。猫と共にすらっと背の高い見覚えのある後ろ姿があった。
その人が急に後ろを振り返った。
花瀬くんとばっちり目が合う。この間2秒ほどだったと思うが割と長く感じた。
彼は少し驚いたような表情をしていたが、すぐに微笑んだ。
「どうしたの、新居さん」
すぐに目を逸らされると思っていたが話しかけられたので焦って
「はぇ?」
と、意味のわからない言葉を発してしまった
すると彼はぷっと吹き出してグーの形にした手を口元に当てて笑った。
「新居さんって、面白いね」
私は自分の頬がカーッと赤く染まっていく気がして恥ずかしくなり少し俯いた。

少しの沈黙の後、花瀬くんが沈黙を破った。

「俺はね、新居さんが心配なんだ。」
「新居さんはいつも我慢してるよね、自分のことはいつも二の次で。いつか壊れちゃうんじゃないかって思って怖いんだ」

━━━怖い?壊れる?私が?

「なんで、そう思うの」
顔を上げて私は彼に疑問をぶつけた

「しにたいって顔にかいてあるからだよ」

その瞬間私の中の何かが黒く渦巻いた。開けてはならない箱を無断で触れられた様な。何とも言えない感情が私の心を侵食していく。

私の心情を察したのか、
「この世から居なくなりたいって本気で思った時はすぐに相談してね」
彼は耳元でそう囁いて去っていった。