その日、あたし、小森新菜(こもりにいな)は2年ぶりに三國町(みくにまち)の土地を踏んでいた。


 町とは名ばかりの、山に囲まれた小さな小さな集落は、あたしが中学3年生までの15年間を過ごした思い出の地だ。


 町には小学校が1つに中学校が1つ、高校が1つ。


 あたしは高校に進学すると同時に親の都合で東京に引っ越したから、町の高校には通っていない。


 ただ、小中の9年間を共に過ごした幼なじみが先日亡くなったと聞き、葬儀に参列するため今朝1番の新幹線で帰ってきた。


 亡くなった友達の名前は、東千帆(あずまちほ)


 家が近いこともあって、小学生のときは毎日一緒に登校するほど仲が良かったらしい。


 ただ、中学に上がるころになると、華やかなグループに憧れるあたしと読書が好きな学級委員気質の千帆とで、好きなものや日々の過ごし方に乖離が生じていた。


 だから、千帆が死んだと聞いても正直あまりピンときてはいない。


 葬式自体も、親同士の仲が良かったので来ているだけだ。