とても寒い地に1人の女がいた。


その女はいつも朝はやくに起きると、その足で家から少し離れた井戸へと向かう。

朝食を作って掃除をして。

そして日中は近所の子供達にたくさんのお話を聞かせた。


そんな、ごくありふれた幸せ。



「お姉ちゃん今日はどんなお話をしてくれるの?」



そうだなぁ、今日は少しだけ長いお話をしようかな。

木漏れ日の下、彼女は淡い着物をまとって浅葱色の簪を揺らした。


首元にも少し古びた浅葱色の首飾り。



「今日は、愛情のお話」


「あいじょう?」


「そう。みんなもお父さんお母さんからたくさんの愛情をもらっているでしょう?」



それは、当たり前のようで当たり前じゃない。

とても難しいようで、意外にも簡単なもの。


けれどそれは時として哀しみも連れてきてしまうから。