そして任務当日。
今日はいつここへ帰れるかわからないので、前日に龍とした約束〝1日1回必ず龍に会いに行く〟を守る為に朝から龍の元へ軽く挨拶をしに行ってきた。


『龍!それじゃあ行ってくるね!』

『行かせたくない』

『行ってきます!』

『…行くな』

『行ってきます!』

『…無傷で帰って来い』


これが今朝の簡単な龍との挨拶の内容である。
私はいつものように笑って龍に挨拶をし、龍はそんな私に対してとても不機嫌であった。

私を一度失った記憶が鮮明にあるのだ。強いはずの私のことが普通に心配なのだろう。

私がこんな任務で死ぬはずないのに。


そういえば朱もその点では龍と同じようにどこかおかしい。朱もまた何故か私を心配する素振りをよく見せる。

私は強いはずなのに。朱は私や龍と同じように2回目などではないはずなのに。


「おい。紅。服は選んだか?」


朱や龍のことを考えていると向こうの方から琥珀に声をかけられた。


「うん」


私は手元の服やらウィッグを見て、その琥珀の声に軽く返事をした。


私たち能力者は任務に向かう時、学校から用意されたその任務に相応しい服を着る。
ここは学校内にある衣装部屋と呼ばれる部屋で幅広い年代、性別、職業などの服が膨大な量で揃えられている部屋だ。

私と今日任務を共にする琥珀は今まさにこの部屋で今日の任務に合う服を見繕っている最中だった。


「そうか。じゃあ試着室に行くぞ」

「はーい」


琥珀にそう言われて私は用意した服たちを抱えて試着室の方は歩き出した。