「兄さん!おはよう!」

「……っ!?」


いきなり誰かに声をかけられて意識が覚醒する。
目を開ければそこに広がっていたのは見慣れた私の部屋の天井と私の顔を覗き込む中等部の制服を着た私の一つ下の弟、朱ーシュウーの姿だった。


「しゅ、う」


記憶より少し幼いが、私の愛してやまなかった朱がいる事実に嬉しくて思わず名前を呼ぶ。あまりにも久しぶりに呼んだのでその呼び方は自分でも驚くほどにたどたどしい。


「どうしたの、兄さん?」


私の様子がいつもと違うことに気づいた朱が不思議そうに私を見つめる。


その姿はあまりにも儚気で美しかった。
クリーム色の色素の薄いサラサラの髪は朝日に照らされてキラキラ輝いて見え、長い睫毛の奥から見えるこぼれ落ちそうなほど綺麗で大きな瞳は私をまっすぐ見つめていた。

私たち姉弟は二人とも美形の部類に入るがあまりにも似ていない。
弟は誰からも愛されるほど愛らしく儚気で可愛らしい。私にはその愛らしさも可愛らしさもない。

大好きだった私の弟。私たちの関係は良好だった。良好だった時の習慣の一つとして朱は毎日私を起こしに来てくれていた。
だかそれは最悪だった一年で壊れてしまう。

悪かったのは私なのだけれど。