大学一年の冬、友達数人と スキーに行く。


軽井沢の別荘に 一泊するために スキー場から 車を走らせる。
 

「あっ、ちょっと。そこ 右に曲がってくれる?」

運転している友達に 智之は言ってみる。


角を曲がると 小さい頃 一緒に遊んだ 麻有子の家。

ほんの気まぐれだった。
 

「うん?何かあるの?」

快く ハンドルを切る友達。
 
「うん、ちょっとね。」

と答える智之は 麻有子の姿を認めた。



家の前の駐車場 車を下りる麻有子は 高校生の制服姿だった。


窓に張り付いて 麻有子を 見続ける智之。



胸の中が 泡立つような 熱い思いで満ちてくる。
 


「智之。今の女の子 知り合い?」

車の中で 智之に問いかける友達。
 
「うん。昔の。」

さらりと答えて 小さく深呼吸する。



“ もしかして 麻有子のせい ”


心の中を 誰かが ノックする音が聞こえた。