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ーーー過去の悪夢は、もう悪夢じゃない。







『…あっ!橘頼智さんだ!』

『え?…あ、ホント!何で?何で中等部の校舎に来てるの?!』



女子生徒が突然歓声をあげる。

兄貴の名前を耳にして、思わず身を隠してしまった。



…あれは、昨年の10月頃だろうか。

俺がまだ北桜学園の中等部にいる時。

仲間と食事会でホテルのレストランに行った際、偶然にも…兄貴と薫に鉢合わせてしまった直後のことだった。




陽も沈みかけた夕方。

授業も終わり、校舎の正面玄関で忠晴の迎えを待っていた時のこと。

隣のキャンパスの大学生である兄貴が、何故かこの中等部の校舎に登場した。

学園の有名人である兄貴が登場すると、とたんに中等部の生徒は騒ぎ出す。

みんな羨望の眼差しを向け、歓声をあげていた。



…俺は、先日の薫の件もあり、兄貴とは顔を合わせづらい。

というか、兄貴とはまともに口を聞いていない。

兄貴はいつも帰りが午前様だし、薫の件もある。



何で、中等部の校舎に来てるんだよ。

…だなんて、理由はわかってるけど。