「ち、千秋くん!? どこ行くのーっ」

「うるさい」



う、うるさい……って。

状況が理解できていないんですけど!?


女の子たちの叫び声がときどき、聞こえるし。


そりゃそうか。

こんな平凡人間が、超絶かわいい男の子に手を引かれているんだから。

しかも、千秋くんはお弁当をしっかり持っていてくれて。


周囲からの視線が痛かったけど、千秋くんとこうして一緒にいられることが嬉しかった。


連れて行かれたのは、日当たりのいい裏庭。

千秋くんは、裏庭の木の下に座る。



「あんたも座れば?」



頷き、千秋くんから少し離れたところに座る。

その距離感に違和感もあったけれど、今はこのくらいの距離なのかな、と思う。



「あんた、さっきの男と知り合い?」



千秋くんが不審そうに聞いてくる。



「知り合いっていうか、前に神崎くんも絡まれていて。先輩? に大口叩いちゃったんだよね」

「なにそれっ」



千秋くんが笑ったので、私は神崎くんと出会ったときのエピソードを話した。