雅くんにストップウォッチを返したあの日から、話していない。

挨拶も。目すら合わせていない。

でも翠さんと笑いあう雅くんの声は、どんなに小さくても私の耳がキャッチして、聞かなきゃ良かったってすぐに後悔しちゃうんだ。


今もそうだよ。

廊下で話しているでしょ?

 
雅くんの甘く穏やかな声に重なるのは、幸せそうな翠さんの笑い声。


私の耳。

雅くんの声は、どんな時でも堪能しないと気がすまないの?

聞いたら傷つくだけだなのに。

そろそろ学習しようよ。本当に……。