「いやっ!」
急に現実の世界に意識が戻されて私は自分が”誰か”に抱きしめられている感覚に、急に恐怖を感じた。

私が私じゃないみたいに、心に記憶に支配されてしまいそうな感覚。

そして何よりも恐怖を感じたのはその”誰か”が恭じゃない。

ありったけの力でその”誰か”を私は押しのけると、あたりを見渡した。
一瞬視界に入ったその”誰か”の頬に涙が伝っているのを見て私の心がずきんと痛む。

それでも私が探しているのはたったひとり・・・

「・・・恭・・・・」

今日はステージから少し離れたところから私たちを見つめていた。
私は精一杯の力を振り絞り恭の方へ手を伸ばす。

恭・・・