翌日。

朝ごはんを食べて、今日も先に家を出る。

昨日の放課後は誰もいなかったから一緒に帰れたけど、万里くんが「プリンス」と呼ばれる人気者だと知った以上、私といるところは見られないほうがいいだろう。

昨日同様、早く着きすぎて、教室にはまだ誰の姿もない。

いつものように水やりをしてから、校舎に戻る。

教室に入ったと同時に、1人の人物が目に入った。

男友達と楽しそうに話す、西田くん。

その姿は私がよく知る彼で、昨日見た人は別人だったんじゃないかと思うほど、優しい雰囲気を醸し出していた。

あそこまで表裏を使い分けられるなんて……逆に尊敬するなぁっ……。私もあのくらい、たくましく生きたい。

席に着いて、次の授業の用意をする。日奈子ちゃんはまだ来ていなくて、予習がてらノートを開く。



「桜ちゃん、おはよ」



背後から聞こえた声に、びくりと肩が跳ねた。

笑顔をこっちに向けた西田くんが、私の前に来る。

今まで西田くんに対しては、そこまでの恐怖を感じなかったのに……今は、心臓が異様なほど早く脈打って、冷や汗が頰を伝った。



「勉強してるの? 桜ちゃんは偉いね」

「……そ、そんなこと……」

「今度俺にも勉強教えてよ」



にっこりと、いい人にしか見えない笑顔を向けられ、怖い人だと改めて思った。