ご飯を食べ終わったあと、洗い物は嶺くんがしてくれた。
「最後までするよ」と言ったけど、「このくらいさせろ」と優しく微笑まれて、お言葉に甘えることにした。
私もお風呂をすませて、寝る支度をする。
ウィッグ……一応被っておこう。
この部屋には嶺くんしかいないから、別にいいかなとも思ったけど、たまーに見回りの人が点呼に来ると言っていたし、油断は禁物だ。
お風呂上りにウィッグなんてやだなぁと思いながらも、着けてから洗面室を出る。
……あれ?
玄関で物音がしたので見ると、ルームウェア姿のまま外に出ようとしている嶺くんがいた。
「嶺くん……どこか行くの?」
私に気づいて、ピクッと反応した嶺くん。
振り返ってこちらを向いた表情は、どこかバツが悪そうに見えた。
「……あー、ちょっと出てくる。帰るの遅くなるかもしれねーから、誰か来ても出るなよ? 俺は鍵持っていくから」
……え?
こんな時間から出ていくの……?
管理人さんたちが見回りに来る心配はそうないだろうけど、夜の9時なのに……。
「う、うん……」
心配になったけど、私にそんなことを言う権利もないと思い、首を縦に振った。