あぁ鬱陶しい。不愉快極まりない。できることならヤツを殺したい。

教室に乃々を残して、帰宅した。

自室に入って、脱いだブレザーを投げ捨てる。

新川、和己……。

乃々からその名前を聞いて、すぐに調べた。

3年の生徒会長。定期試験は常に首席だが、素行は不芳で、サボりぐせがあるらしい。

なぜそれが許されているかというと、あいつの親に理由があった。

新川和己の父親は国会議員で、外交官。しかも特派大使ときた。

日本国政府を代表して、外国における重要な任務を行う、言わば高位の外交官。

財力、地位においては椎名グループの足元にも及ばないが、国会議員となると厄介だ。

学園に多額の寄付をしていて、教師たちからも一目置かれているらしい。

乃々に近づいたという重罪で、退学にでも追い込もうと思ったが、そうするには時間がかかる。

しかも、それを待つよりもヤツが卒業するほうが早いだろう。

だから――乃々に近づかないように、予防線を撒き散らしてきた。


……はずだったのに。


さっき、教室で抱き合っていた2人の姿を思い出し、食い込んで血がにじむほど拳を強く握った。