私には、幼なじみがいる。
運動も勉強も……なんでもできて、とびきり優しい幼なじみが。
同い年なのにどこか大人びていて、紳士で、まるで王子様みたいな人。
「乃々、起きて」
大好きな声が聞こえて、重たい瞼を開く。
ゆっくりと広がっていく視界の真ん中に、綺麗な笑顔が映った。
「ん……きょぉ、ちゃん……」
名前を呼んだ私に、再び微笑むその人の名前は、椎名京壱。私の幼なじみ。
「早く起きないと遅刻しちゃうよ」
朝に弱くて、目覚めの悪い私をいつも起こしに来てくれる京ちゃん。
優しい声に促されるけど、まだこの微睡みに浸っていたくて、
わがままを零した。
「もう、ちょっと……」
「ふふっ、可愛いけどダーメ。起きないとキスしちゃうよ」
「……っ」
京ちゃんのそのひと言は、私を一瞬で現実世界に引き戻した。