ずしんと沈んだ気持ちで
一日を終えて、
足早に昇降口に向かう。


「お、お姫様、発見」


下駄箱で居合わせた遥先輩に
くるりと背中を向ける。


「ごめん、今日は電車で帰る」


今は、
ひとりで考える時間がほしい。


さすがに、
遥先輩と一緒にいるのは、辛い。


「ダメに決まってんだろ。
車に乗れよ」


「ごめん、ホント、
今日はちょっと無理」


「残念ながら、
凛花ちゃんに拒否権なんて
ありあせん」


パッと駆け出すと、
ぐっと手首を遥先輩に
つかまれた。


「はい、凛花ちゃん、確保」


「ホントに嫌なの!
一緒に帰りたくないっ!」


遥先輩のその手を強く振り払うと
むぎゅっと、
遥先輩の両腕に捕獲された。


「『無理』とか、『嫌』とか、
ありえないから」


「どうしてそうやって勝手に
決めちゃうの?

私は電車で帰りたいっ」


遥先輩の腕のなかから
必死で抗議。


「……そんなの、凛花のことが
心配だからに決まってんだろ。

あんなことがあってから、
怖くてたまんねえんだよ。

お前をひとりで帰して、
もし、なにかあったらって考えると……

少しは俺の気持ちもわかれよ」


苦しそうに息をつく遥先輩に
ハッとする。


「……ごめん、なさい」


いつもいつも
私は遥先輩の気持ちに気が付けなくて

遥先輩を傷つける。