「じゃ、凛花、また明日」


「うん、また明日」


マンション前で遥先輩と別れると、
ひょいっとカバンが浮いた。


あれ?


カバンを追って視線を上げると、
煌めくアイドルスマイルが
すぐ目の前に。


「おかえり、凛花」


……鈴之助?


「こんなところで、どうしたの?」


「凛花が帰ってくるのが見えたから、
迎えにきた。じゃ、遥さん、また」


私のカバンを手にして、
先にエントランスに向かった鈴之助が
振り返る。


「ほら、行くよ、凛花。
今日、家で一緒に映画見ようって
約束してたじゃん」


「う、うん」


「凛花の好きなお菓子も
たくさん買っておいたんだよ」


うながすように私の肩に置かれた
鈴之助の手が、
その瞬間、バシッと払われた。


「ああ、ごめんな。
でっかくて目障りな虫がいたから」


殺意むきだしで虫を払った遥先輩に、
鈴之助がにっこりと笑いかけている。