幸い、翌朝はどしゃぶりの雨で
朝のランニングは中止。

遥先輩を待たずに学校へと向かう。


下駄箱でばったり遥先輩に会ったものの
盛大に視線をそらして、

足早に教室へ。


「おはよ、凛花。
なに先に来てんだよ。
俺、凛花の家に行ったんだけど」


ぷいっ。


「あれ、俺の弁当は?」


ぷいっ。


「あ、それ俺の?」


「私のお弁当」


ぷいっ。


「凛花だったら、
作ってきてくれるって
期待してたんだけどな」


しょんぼりと肩を落とした遥先輩から
すっと、視線をそらす。


「凛花、なに怒ってるんだよ」


「怒ってません」


本当は猛烈に怒ってるけど!

今は口もききたくない。


「ちぇっ。
やっと懐いたと思ったのに」


「私は野良ネコじゃありません」


「ほら、こっち向けって、凛花」


教室までついてくる遥先輩を
完全に無視。


「おい、凛花!
そういえば、昨日のNステで鈴のす……」


その一言に、

慌てて遥先輩のくちを塞いで
腕を取る。


「遥先輩、やだこんなところに!
全然気が付かなかった!

眼鏡の度が合ってないのかもっ! 
じゃ、ちょっと向こうで話が!」


ずるずると遥先輩を引きずって
いつもの屋上へと続く階段を上っていく。


雨で屋上には出られないので、

手前の踊り場についたところで
ドンっと
遥先輩を壁に押し付ける。