プシュー――…。



『麗蘭街、麗蘭街――…』



だんだんと減速を伴い、ついに停まった列車。

立った時に感じた足の痺れは気のせいだろうか。…それとも、本能的なものだったのだろうか。


電光掲示板、自動音声、足を進める人々の話し声。

太陽はどこを探しても見えないというのに、確かな光に溢れている。…そんな異様さもまた、この街に合っている気がしてならなかった。



「今日の朱里の服、新しいやつ?すっごい似合ってる!」

「この前買ったんだ。ありがとう」

「いいなー、朱里は大人っぽいから何着ても映えるっ」

「そんなことないよ。わたしは莉菜の方が羨ましいな、華奢で明るい色が似合うから女の子らしくて」

「えぇー、そうかなぁ?でも嬉しい!うふふっ」



改札機にカードをかざし、人の波に乗って階段を上る。

…買ったばかりの新しいセットアップの服。髪も巻いて、メイクもしっかりめにしてきた。


周囲を歩く人たちもそう。髪色から足先、バッグまで華やかに着飾られていて

ハイヒールの音が何重にも折り重なって聴こえてくる。



…本当は、必死だ。

幼く高校生に見られないように。身の丈もろくに理解せず、背伸びをして。


“麗蘭街に居て恥ずかしくないように”、必死なのだ。