7・雰囲気が変わってきた
 テキトー炸裂で竜王城追放の危機から一転、なんと正式にメイドとして雇われることになりました。
「メイドといっても、下っ端の下っ端の下っ端だからな!」
「は~い!」
 納得いかないけど竜王様の命令だから仕方なく受け入れたというフォーンさんは、厨房に戻る道すがらもまだブツブツとお小言を言っています。
 そんなに気にくわないなら放っておいてよ。──と言いたいところだけど、我慢我慢。どうせ日常に戻ればそんなに接点はないから、顔を合わせることもないし。

 私が厨房に戻ると、ざわついていた室内が一瞬でしんっと静まりました。使用人さんたちが私に注目しているのが、痛いほどわかります。
「ライラック! 大丈夫だったかい?」
 トープさんが最初に駆け寄ってきました。
「大丈夫でしたよ! なんのおとがめもありませんでした」
「ほんとかい!?」
「はい。おとがめどころか、これからスープは私が担当しろと、お仕事までもらってきちゃいました」
「はあ? それはいったいどういう……?」
 トープさん、困惑しているようです。
「こほん。不本意ながら竜王様がこの小娘の作ったスープを大変お気に召してだな、これから毎日作って持ってくるようにと命じられたのだ。誠に不本意ながら」
 フォーンさんが説明しました。不本意不本意って、二回も繰り返さなくてよくない? フォーンさんの意思じゃないんだから。
「ライラックのミソシルを?」
「そうだ。まあどうせすぐ飽きられるだろうから、仰せに従うように」
「そうかい。まあでも、あのミソシルはたしかにおいしいからね。竜王様がお気に召すのもわかるってもんだよ」
「トープ! お前まで!」