5・テキトー炸裂でやっちまった
 私が作った『なんちゃってお味噌汁』を飲んだトープさんの反応から、この国には〝出汁〟それも〝和風出汁〟がないことを発見しました。
 洋風な出汁はもとからあったと思うんです。だって野菜スープを作っていた時は見向きもされなかったもん。
「あんた……料理は(・)できるんだね」
 トープさんが驚いた顔で私を見ています。
 というか、料理『は』ってなんですか。『は』て。
 まあでも仕方ないか。こっちに来てからというもの、失敗しかしていないわけだし。
「料理は普通にできます。でも片づけはできません」
「それは知ってる。……ふうん、意外な特技があったんだね」
 そんなにまじまじと見ないでください。私にだって、できることのひとつやふたつはあるんですから。……まあ、料理はユイちゃんのおかげだけど。
 あ、そうだ。
「よかったら、私、みんなの分の賄い作りましょうか?」
 私にできること、ひらめきました! 忙しいみなさんに代わって、私が賄い係になるんです。
「その『マカナイ』ってなんだい?」
 そこからか~。今までつまみ食いで済ましていたから、ちゃんとした『賄い』は知らなくても当然ですね。だから以前、メイドさんに『賄い』のことを話しても通じなかったのか。
「『賄い』というのは『賄い料理』のことで、お客様──ここでは竜王様のためにではなく、従業員のために作る食事のことなんです」
「へえ。そんなものがあるんだ。それをあんたが作るって?」