コースターの企画が承認され、優莉の仕事が急ピッチで忙しくなっていく。

ネットであたりをつけた業者にも直接出向き、実際にコースターの素材やロゴマークの確認などで外出する機会も増えていた。
今日もこれからその業者との打ち合わせである。

前回もらったサンプルなどを大きなバッグに詰め、優莉がエレベーターを待っていると、上の階から降りてきたそれには隼がひとりで乗っていた。優莉の顔を見て優しく微笑む。

閉ボタンを押してふたりきりの空間になると、不意に隼は優莉を抱き寄せ髪にキスを落とした。


「あ、あのっ、誰か乗ってきたら大変ですからっ」
「大丈夫大丈夫。仕事中に優莉の顔を見られると、俄然元気になれるよ」


慌てて離れようとするが、隼の手にがっちりと腰を捕まえられていて叶わない。そのまま頬にまでキスをされたところで、エレベーターが軽い音を立てて隼の降りる階に到着。顔を真っ赤にしながら急いで離れると、扉の向こうに社員が数人立っていた。

感づかれなかったとは思うが、やきもきせずにはいられない。

隼は降りる間際に意味ありげな視線を投げて、扉の向こうに消えていった。