出社した直後、隼がデスクに座ったタイミングで社長室のドアがノックされる。入ってきたのは秘書の美穂だ。


「社長、本日午後五時のお約束ですが、先方から時間を早めてほしいと連絡がありました。いかがいたしましょうか」


今日の来客予定はその一件のみ。クールブロン立ち上げの頃から付き合いのある空間設計の会社だ。レストランのリニューアルなどでいつも世話になっている。


「あちらの希望は?」
「午後二時頃でいかがでしょうかと」


それは隼も願ったり叶ったりだ。


「それで進めてもらってかまわない」


その取引先とは流れでそのまま会食となることが多いため、今夜は遅くなると覚悟していたが、隼もできるだけ早く帰りたい。


「承知いたしました。それから、次号の社内報に掲載される記事が出来上がったそうで、念のために社長に見ていただきたいとおっしゃっておりました」
「社内報の記事?」