時に未来は、自分の思惑とは正反対に向かう。

自宅アパートの玄関に座り黒のショートブーツを履いた優莉は、「よいしょ」と声をかけて立ち上がった。おばさん臭いなぁと思いつつ、そうしないと立てる気がしない。気の重くなる予定が、この後に控えているためだった。


「はぁ……」


気持ち同様に重いため息をついてから、「いっけない。幸せが逃げちゃう」と吐いた息をもう一度吸い込む。


「よし、行こう」


気分を切り替え、ドアを開けた。

優莉が特別賞を引き当てたパーティーがあったのは先々週の木曜日。その十日後にあたる日曜日の今日、賞品である〝霧生社長とドキドキ!? 一日デート券〟が行使される。

パーティーの翌日、優莉は早速運営事務局に電話で問い合わせたが、結果は無情なものだった。その権利をほかの人に譲ったり放棄したりできないというのだ。

せっかくの賞品だから、大喜びする人間にあげた方がいいのにという優莉の気持ちはまったく届かずじまい。社長に対して失礼だと逆に叱責され、踏んだり蹴ったりだった。