ひとりで静かに過ごすのが好きだった俺は、広い屋敷にたくさんの人間が出入りしてるのを常日ごろから煩わしく思っていた。



周りに両親以外の大人が何人もいて、自分のお世話をしてくれる。



俺にとって当たり前だった環境が普通じゃないと知ったのは、多摩百合の幼稚部に通うようになってから。



『桐ケ谷』という名前には、圧倒的な力があった。



どこに行っても注目されて、好奇の目にさらされる。



そんな大人たちの態度は子どもにまで伝染して、先生を含めた全員が俺に気を遣ってた。



父親の仕事関係の人間に会う機会も多くて、俺を見てヒソヒソ話す大人たちがなにを言っているのかはわからなかったけど、向けられる視線はいつだって興味本位そのものの目。