「綾乃」


リムジンの送迎でお家に帰ってくると、突然千景くんに腕を引かれて振り返らされた。


「あとで俺の部屋にきて」

「え?」

「明日小テストがあるんでしょ? 綾乃は英語が苦手だから、俺が教えてあげる」


あれ?


わたし、英語が苦手だなんて千景くんに話したっけ?


小テストのことも、なんで知ってるんだろう。


「千景くんだって勉強があるでしょ? 邪魔できないよ」


「だめ。多摩百合はたとえ小テストだろうと成績に響くし、補習なんてことになったら大変だから」


わたしの心配をしてくれてるってことだよね。


なんだか、申し訳ない……。


「わかった?」


そう言い切られて、まっすぐな目で見られちゃったら当然だけど断ることなんてできなかった。