【朔side】


待て。待てよ。


メシが終わり、部屋に駆け込んだ俺は、部屋の中を落ち着きなく行ったり来たりする。


『10年前に、10年後にまた会おうねって約束した子がいる』


小春がウキウキしながらそんなことを話した瞬間、昔の記憶がビビビ──と、走馬灯のようによみがえった。


あの、ときどき思い出していた、懐かしい笑顔と共に──。


あれはたしか、小学校に上がる前の夏だった。


そのとき俺は、まだここには住んでおらず、母親の昔からの友だちに会いに、この街に遊びにきたんだ。


その友達には、俺と同じ年の女の子がいた。


俺はそのころ、幼稚園で女のボスやそいつを囲んだ一味から、パシリのような扱いを受けていた。


お母さんごっこでは、人間の役すら与えられず、犬として、首輪まがいの紐をつけられたり。