その日の夜。私は一条家にいた。昴さんが晶くんのことを家へと運んでくれて、今はソファに寝かせている。


「父さんに連絡した。術の種類を見てみないと分からないけど、そんなに深刻な術じゃないだろうって。でもやっぱりこのまま目覚めないのはマズいらしい」

中庭で匠さんと電話をしていた昴さんが戻ってきた。


「で?親父は帰ってくるって?」

晶くんが霧島くんに術をかけられたことは、もちろん聖に伝えた。


「すぐにはムリだって。今海外にいてすぐに動けない状況らしい」

「……ちっ」

聖はかなり苛立っている様子だ。

自分の知らないところでそんなことがあったということもそうだけど、一番は晶くんのことを防げなかった悔しさだと思う。


「なんで霧島は晶に手を出したんだよ。こっちは兄貴に言われたとおり、大人しく様子を見てただけだろ」

「ご、ごめん。私のせいかも……」

私はぎゅっと唇を噛む。


「なんでお前のせいなの?」

「……霧島くんに体質を変える手助けをしろって言われたの」

「体質?」

「女子に触れられるとカラスに変異する体質だって。それで私に言い寄ってきたところに晶くんがたまたまいて、それで……」

一条家のリビングが静寂に包まれる。私の指先が震えるている中で、聖から飛んできた言葉は厳しいものだった。