《序章》

怪化視(あやかし)...それは幽霊や妖怪の様な類いのものとはまた違う。 人の醜い欲望や心が巨大化し、具現化したものである。その怪化視を浄礼する者が浄礼者である。







櫻が散った頃...五月(さつき)

「父上!庭の掃除が終わりました。」
「ああ、ありがとう数鈴(すず)。よくやった。」
山の奥、人里離れた場所の神社に二人の親子が住んでいました。
この神社の神主の付裳 数都(つくも かずと)。 その息子の数鈴。

人里離れた所にある神社ですが、信仰している人は多く、山を二つ越えた村からも来る人がいました。 そのため神社は何時も人で賑わっていました。

神主である父親が忙しいため、息子である数鈴が神社の掃除をしていました。
数鈴はたった今、神社の庭掃除が終わったところでした。

「父上。人の出入りも少なくなりましたし、かるたをしませんか?」
仕事を任されているからといって数鈴は遊びたい盛りのまだまだ子供です。
普通の子供は近くの家の子供と遊んだり、寺子屋に行って勉学に励んだりするのですが、数鈴はまだ幼いので、一人で山を降りるのは危険な為、神社に子供が来た時にしか遊べず、寺子屋にも行かせてもらえませんでした。
それでも数鈴は不満に思うことはありませんでした。
父親は頭がよく、勉学を教えてもらえますし、時間が空いた時は数鈴は遊んでもらえるのです。

「そうだな。かるたをしよう。今日は私が勝つぞ!」
「いえ、今日も勝つのは僕ですよ!父上。」

とても優しい父親です。

「あっ!その札は僕が取りました!僕のですよ!」

「あ~あ。もう一寸早く取れていたらなぁ。」

とても愛らしい子供です。

「今日も僕の勝ちです!父上、僕強いですか?」

「また負けてしまったよ。本当に数鈴は強いなぁ。敵わないなぁ。」

家族にとても愛されている子供です。

その幸せな日々がずっと続くと数鈴は信じていました。


五年後

五年前は幼かった数鈴は背丈が伸び、顔立ちはまだまだ子供ですが、ふとした時に大人の様な顔を見せる様になりました。

数鈴は、掃除以外にも神社の仕事を手伝う様になっていました。

数鈴は、将来この神社の神主を継ぐものだと思っていました。





















あの日が訪れるまでは...