謁見の間にて、玉座に座るメアリに垂れていた頭を上げたのは検食官の男だ。

「恐れながら、昨日の毒についてご報告申し上げます」

 検食官の声が響くのを聞きながら、メアリの横に立つイアンがモノクルに手を添えた。
 大臣らと各近衛騎士隊長たちも見守る中、検食官は説明を始める。

「毒は、ティリノという植物から取れるもので、主に花と根から採取されます。特徴としましては、熱でゆっくりと溶けるという性質がございます。また、この花は大変珍しく、旧ディザルト公国領の西方のみに咲くものでして、一般に出回ることはありません」

「つまり、闇取引のみで入手可能ということですか?」

 硬い表情でメアリが問いかけると、検食官は「仰る通りです」と答えた。

(では、ヴェロニカ様は、闇取引を行っていたということ?)

 しかし、毒だと知らなかったのが真ならば、取引相手が間違って渡したか、はたまたヴェロニカは取引を行っておらず、手に入れていた別の者から購入したのか。

 思考を巡らせていると、イアンが検食官に尋ねる。

「毒の量は」

「恐らくですが、致死量ギリギリかと」

 謁見の間が一瞬ざわつき、唇を噛んだメアリがそっと俯くとオースティンが一歩前に踏み出した。

「陛下、ヴェロニカ様の尋問にて、今朝方、進展がありましたのでご報告しても?」

「はい、お願いします」

 顔を上げて、メアリはしっかりとオースティンを見つめる。