執務室で広げた羊皮紙に書かれていたのは、茶会への誘いだ。
 見間違いかと思い、メアリは再度読み直してから、文末に記された差出人の名をじっくりと見る。
 【ヴェロニカ・アクアルーナ】
 確かにそう書いてある。

 先日、コロシアムで行われた御前試合では挨拶を交わしたのみで、特に親交を深めたわけではない。
 まともに話したのも、ウィルと共にいた時が最後だ。
 気まぐれでも起こしたのか、何か目的があるのか。
 イアンに相談すると、どちらもあり得るが、どちらにせよ警戒は必要ですとアドバイスを受けた。

 ランベルトとメアリを襲わせた青年との繋がりはまだ判明していないが、メアリが何者かに襲われたという情報は重鎮たちも把握済みだ。
 ランベルトの元にも同じように知らせを届けているので、ヴェロニカの誘いを断った場合、『疑っているのか』と難癖をつけられ揉める可能性もあるとイアンは考えている。
 また、社交が王族にとって大切な仕事のひとつであり、万が一ヴェロニカに二心がない場合は、今後、メアリが目指している良好な関係への一歩となり得る。

 イアンはメアリにそれらを語ると、ふと窓の外へと視線をやった。

「では、王城の離宮で開催するのであればと、お受けになられては?」