一方、そんなジンと泉海さんのやり取りを
知る由もないアタシは
仕事の取材を終えてマンションに帰宅。


「帰るのが憂鬱…」


エレベーターに乗り込み
ぼんやり庫内の壁に寄り掛かりながら本音を零した。


喧嘩しているワケでも
顔を合わせたくないワケでもないのに気が重い。

女は怖いしさ、本当。
（『隣人はクールな同期でした。』早乙女ヒナコ：参照）


でも今回、最も恐れているのは
ジンの泉海さんに対する気持ちの部分。

どうして何も話さないんだろ
曖昧にするんだろ。


「アタシがいない間に
更に親睦を深めて関係性が進展していてたりして。」


“進展”
って、実はもう手を出しているんじゃ…


やめよやめよ。
自分で発して急に恐怖。
余計なマイナス思考は悪い結果しか生まない。


よくない考えを否定するように
首をブンブンと横に数回振っていると
ちょうどエレベーターが部屋の階に到着。


扉が開いたと同時だった。


「え…――」


目に飛び込んだその“姿”に
アタシは衝撃で、全身が硬直した。



ジンが…
泉海さんの部屋から出てきた…？――――