「麻有ちゃん、ベッド買い換えようか。」

ベッドの中で智くんが言った。
 

私の部屋のベッドは、シングルで 二人で寝るには あまりにも狭い。

週末はともかく 翌日仕事の日は 私も気になっていた。
 

「でもねえ。この部屋に 大きなベッド入れたら 何もできなくなっちゃうよ。」
 
「俺は、ずっと麻有ちゃんと 寝ているだけでもいいけどね。」と笑った後で。
 


「引越ししようか。二人で住む部屋探そうよ。」

智くんは真っ直ぐ私を見つめて言った。
 
「えっ。一緒に?」



11月の終わりの、付き合って2カ月足らずの夜。
 


「麻有ちゃんは、いや?」
 
「いやじゃないよ。」私は強く首を振る。
 


「後で ちゃんとプロポーズするつもりだったけど。何か、もう離れるのいやなんだ。麻有ちゃん、結婚しよう。」


智くんの言葉を、私は複雑な思いで聞いていた。
 


「私も。私も、ずっと智くんと一緒にいたい。でも、結婚は無理だと思う。私、智くんの家とは 釣り合わないから。」


私がずっと抱いていた不安だった。

智くんが大好きで、離れ難くなっていて。でも智くんとの結婚は諦めていた。 
 

こんなに早く、結婚の話しになるとは思わなかった。

だから目を背けていたけれど、いつかそのことで 二人が別れるような事になったら耐えられない。

智くん無しで生きていくなんて できないと思っていたから。