土曜日は、秋晴れの旅行日和。

智くんは 9時に迎えに来てくれた。
 

「今日の麻有ちゃんも可愛いね。」

いつよりカジュアルな パンツスタイルの私を 智くんは眩しそうに見つめた。
 
「智くんも。カッコいい。」
 
最近、智くんのスーツ姿を見慣れていた私も、一週間ぶりのスポーティな智くんは 新鮮だった。
 


静かな運転で、途中休憩をしながら箱根に入った。
 


「箱根って、色々見どころがあるんだよ。まず “ 星の王子さま ” に行こうね。」
 

星の王子さまミュージアムは、庭園も 再現された街並みも可愛くて。

私達は歓声を上げながら歩いた。
 

展示された資料を見ていると 物語を読んだ頃の自分を思い出す。

それは智くんと出会った頃で。

あの頃から私は智くんが好きたった。


智くんと一緒にいると時間が過ぎることが怖かった。

智くんが、東京に帰ってしまうことが怖かった。
 


中庭にコスモスが咲いていて、秋の軽井沢を思い出す。

智くんのいない季節、次の夏を待ちながら 読書をしていた私を思い出す。



繋いだ手にギュッと力を込めると、智くんは優しい微笑みを返してくれた。