その後はもう授業どころではなかった。


先生は学校の隣に立つ診療所へ担ぎ込まれ、男子生徒2人は職員室に隔離された。


男子生徒たちはなにを質問されても「虫を殺そうとしたからやり返しただけだ」と、説明しているらしい。


大山君にしてもそうだ。


虫のこととなった瞬間に人が変わったかのように暴れ出した。


あたしは自習となった教室内で茫然と自分の席に座っていた。


形だけ配られたプリントには全く目を通していない。


後ろから聞こえて来るプリントに回答を記入して行く音が気になって仕方なかった。


さっき、男子たちが本気で先生を殺そうとしていたとき、大西さんは確かに笑っていた。


それに男子たちが強行に及ぶ前に彼女は『ダメ』と、口走っていた。


まるでそのひとことが引き金になり、行動に移したかのように見えた。


彼女ははやりどこかおかしい。


普通の人間ではないような気さえする。


人間の、それもとびきり美しい仮面をかぶった悪魔なのではないか?