『涼々?』

始業式から1週間たったある日。

移動教室に向かっていた時に、彼とすれ違った。

すぐに彼だってわかった。

夏目涼々。

当時、私が小学四年生の時に養護施設にやってきたひとつ年下の男の子。

あの頃と同じ、独特な儚い雰囲気を纏っていて。

向こうは私に全然気付いていないようだったけど。

『私、天井月子!』

『え、あっ、……月子、さん、』

『月子さんって水臭いな〜!いいよ、昔と同じ呼び方で』

何年も会っていなかったし、

そりゃ、私もそれなりに成長してオシャレやメイクなんかに気を使うようになったから。

最初はお互いに少し気まずくて、戸惑ったりしていたけれど。

徐々に徐々に、その気まずさは無くなっていった。