「先輩。」

「...何?」

とある日の学校帰り。

「手、繋いでもいいですか...?」

「...別にいいけど。」

先輩は、私の前に手を出した。

それをそっと握ってみる。

「先輩の手、いつもひんやりしてますね。」

「そういうお前の手はいつもあったかいな。」

「ちょっと...ドキドキしてるからですかね?」

「俺だってそうだよ。」

「そうなんですか?
緊張してます?」

「どちらかといえば、してる。」

「先輩は基本ポーカーフェイスなんですね。」

「そんなこともないだろ。」

「そうですかね。
いつもあんまり物怖じしないじゃないですか。」

「そりゃあ、ある程度は冷静でいようと気をつけてるよ。
無理なときもあるけど。」

「えへへ。たまに先輩が笑ったり、照れたりしてるの、すごく可愛いですよ。」

「おい...。」

「とっても愛しく感じます。」

「...。」

「先輩?」

「お前だって、そういう顔...。」

「...?」

「というか、なんだよ、可愛いって。
せめてカッコいいにしろよ。」

「先輩カッコいいですね。」

「言い方がわざとらしいな...。」

「本当にそう思ってますよ。」

「そりゃあどうも。」

「私は、可愛いですか?」

「...なんだよ。
そう思ってるから付き合ってるに決まってるだろ。」

「そう思ってるって...
どう思ってるんですか?」

「そりゃ...かわいいって...。」

「先輩...。
...あいしてますっ!!」

「うわっ!
ばかっ、くっつくな!」

「えへへ。」

でも、

今思えば、このときぐらいからだろうか。

私は、先輩のことが、ちょっと分からなくなった。

先輩が、またどこか遠い人のように思えてしまった。

どうしてなんだろう。

先輩はこんなにも側にいてくれてるのに。