「朝陽、ごめんな………親父たちを……頼んだぞ……

「お兄ちゃんっっ」

伸ばした手が何も掴めずに虚しく下にすべり落ちる…。

流れ落ちる涙に、額にも身体にもびっしょりと寝汗をかいていた。

高校時代、毎晩毎晩最期の兄の姿にうなされていた。

血まみれの兄の手を握りしめることしかてきなくて、兄の最期の言葉を聞きながら震えながら救急車を待っていた。

大好きだった兄が目の前で交通事故にあってから10年がたつ。

笑顔の兄を思い出したいのに、夢に見るのは思い出したくない兄の姿…。

しばらく見ることがなかった兄の夢を見たのは、多分…今日が蓮司の結婚式だからだろう。