春が来て、私は高校3年生になった。

桃田さんは相変わらず忙しくて、だけど無理してでも私との時間を作ってくれてる。


「いらっしゃいませ」

バイト中に、思いがけないお客さんがやって来た。

「和泉華ちゃん、やっと見つけたよ」

「え?」

「俺、連絡してって言ったよね?名刺まで渡したのに」

そう言うのは、桃田さんの大学の同窓会で会ったカヤノさんだった。

どうして、カヤノさんがやって来たの?
それにさっき、やっと見つけたって言ってたけど。

「バイト何時に終わるの?表で待ってるよ」

カヤノさんはそう言って、お店を出て行った。

初めて会った時も思ったけど、カヤノさんって強引って言うか、私の話を聞こうとしていない気がする。

バイトが終わり店を出ると、カヤノさんは本当に待っていた。

「お疲れさん。さあ、車、乗って」

そう言われたけど、乗っていいものだろうか。

一応、桃田さん連絡しておこうかな。

そう思ってスマホを取り出すと、カヤノさんにスマホを奪われてしまった。

「え?」

「桃田に連絡しようとしたでしょ!あいつに邪魔されたくないから連絡はしないでね。さあ、乗って」

背中を押されて、強引に助手席に乗せられた。

スマホも取られたままで、桃田さんに連絡出来ないしどうしよう。

「あ、あの、スマホ返してください」

「俺の頼み事聞いてくれたら返すよ」

桃田さんの友人なのに無下にすることは出来ないよね。

「頼み事ですか?」

「華ちゃんの写真を撮らせてほしいんだ」

え?私の写真?
そんなのを撮ってどうするつもりだろう。

スカウトの件は、桃田さんが断ってくれてるはずだけど。

「私、他に夢があるので芸能人にはなれません」

「桃田から聞いてるよ。俺が説得するから連絡先教えろって言っても教えないし、探し出すの大変だったよ」

わざわざ私を探してまでやって来たんだ。

そこまでして、私をスカウトしたいと思ってくれているんだろうか。