☆虎兄side☆

 は~。
 ため息が止まらない。


 俺の前で
 笑顔を絶やさない清香(きよか)が
 初めて俺に涙を見せたのは1時間前。


 俺はそれからずっと
 店のカウンターの前に座ったまま
 清香のことばっかり考えている。


 もう
 清香のことを解放してあげる
 べきなのかもな。


 俺は清香と一緒にいると
 どうしてもキツイことを言ってしまう。


 あいつが喜びそうな言葉なんて
 言えないし。


 そのうえ
『笑っている子が好き』『泣く女が嫌い』
 なんて言葉で
 辛い思いや泣きたい思いを
 俺が封じ込めて
 無理やり笑わせていたなんて。


 は~。


 俺があの時
 清香に『付き合って』なんて
 言っていなかったら、
 清香の笑顔を
 もっと引き出せるような男と
 あいつは出会えていたのかもな。


 そんなことを考えて
 ため息をついていると。

 お店の自動ドアが開き
 桃華が学校から帰ってきた。