幻?


気配を全く感じなかった声の主を
驚きのまま見上げると


「千色、浮気か?」


永遠は綺麗な顔で笑った

窮地にやってくるなんて・・・
王子様みたいじゃん

それに初めて見るスーツ姿は
見惚れる程カッコよくて
16歳とは思えない立ち姿に
視線を奪われる

あんなに冷たい言葉で拒絶したのに
まだ“俺の女”って言ってくれる永遠


・・・泣きそう


一歩近づいた永遠の


「千色、綺麗だ」


熱の篭った双眸に囚われていく

・・・私、諦めなくていいの?

永遠と視線を合わせるだけで
閉じ込めようとした想いが溢れてくる

見つめ合う二人


それを・・・


「っ、お前、誰、だ!」


爬虫類が邪魔をした


一度深いため息を吐いた永遠は


「お前、俺を知らねぇの?」


小馬鹿にしたようにククと笑い始めた


「お前なんか知るかっ、俺はな
白夜会三ノ組傘下土岐組の土岐静弥だ」


あ〜ぁ、名乗らなくても良かったのに・・・

だって永遠が一般人なら脅し文句に取られるわよ?

それに
ヤクザ の息子ってだけで平伏すと思っているのだろうか・・・
見るからに残念な爬虫類は

自分より遥かに背の高い永遠に向かってどうだと言わんばかりに顎を上げた


「それが?」


「は?それがってなんだよっ」


「だからそれがどうした」


ヤクザ だと名乗ったのに動じない永遠に焦り始める

・・・馬鹿だね


つくづく残念な爬虫類を見ていると


「どうした、何の騒ぎだ」


背後からザワザワと気配がして
中にいた両親達がお庭へと出てきた


「こ、こいつが俺と千色さんの邪魔をしてっ」


28歳にもなって父親に縋るように
文句を並べる爬虫類に

その両親は同じように文句を打つけてくる

まさか永遠のことを知らないの?

全く動じない永遠は
更に私に近づくと


「色々聞かせて貰うからな」


耳元で囁いた


「あー、千色さんから離れろ」


未だ煩い爬虫類を


「煩せぇ!」


「ヒッ」


隣に立つ永遠は一言で黙らせた