GW明けまで戻らないからと
スーパーには寄ったけれど
結局お酒を買っただけでマンションへと戻った


「お帰りなさいませ」


正面入り口を入ると直ぐの所で
首藤さんが出迎えてくれた


「・・・?」


いつもはカウンターの中からなのに
どうしたんだろうと顔を見上げると


「若がお戻りになられるので」


薄い唇が三日月型に変化した


一ノ組の若頭が帰る

ただそれだけで

堂本から送り込んだコンシェルジュが
入り口と上層階用エレベーター横で待機するなんて

三ノ組傘下のうちの組では考えられない・・・

少し興味はあるものの

凱が焦っているから
急かされるように郵便物を受け取ると
エレベーターの呼び出しボタンを押した

途中で止まっているのか
中々矢印が流れてこないモニターを見ていると


背後の自動ドアが開く音が聞こえてきて


「お嬢っ」


凱が小さく呟くより先に
反射的に振り返ってしまった


「・・・っ」


自分の動作を後悔する

振り返った先に見えた
威圧感のあるオーラに

一瞬呼吸を忘れた

パーティーには一度も参加したことがないから
一ノ組の若頭を見ること自体初めてで

扉三つ分離れたところにある高層階用エレベーターに向かって歩いている姿は

参勤交代に出会した町民のように
平伏したい気分にさせる

その王様のようなオーラを
全く感じないのか


「GWにご飯食べにおいでって
母さんから連絡があったよ」


王様に肩を抱かれた
ん?
東白の制服を着た女の子が
普通に話しかけている


「そうか、じゃあ・・・
どこかで時間を取る・・・か」


「取るかじゃなくて!取るの!」


「ん?あ、あぁ、考えとく」


「も〜〜」


そんな可愛らしいやり取りと
頬を膨らませたまま
エレベーターへと入ってしまった一行


「・・・んと」


あれは・・・誰だろう?と
首を傾げたところで
漸く目の前の扉が開いた