気分が落ち着くのを待って
永遠に支えられながら次に向かったのは奥座敷だった

初めての挨拶のように
永遠と私が並んで座る

向かい側のお義父さんと笙子さんが頭を下げた


「・・・っ」


驚いて隣の永遠を見上げると
永遠はそれが分かっていたかのように頷いた


「千色ちゃん、今日は驚かせたな」


「・・・いえ」


「実は、森谷の破門は永遠と千色ちゃんのことが無くても決まっていたんだ」


「・・・っ」


驚いたけれど、驚きよりも
そう言ったお義父さんの眉が下がっていて
申し訳ない気分になる


「ここ十数年、森谷は娘の病気を盾に
三ノ組の定例会は勿論のこと
全ての会合に顔を出していない」


「・・・え」



「一ノ組主催のパーティーと正月挨拶だけ、綺麗に着飾ってやって来る
お陰で、三ノ組としての面目は丸潰れだ」


「申し訳ございません」


「いや、千色ちゃんに謝って貰いたい訳じゃない
ただ・・・北の街を半分任せている以上
森谷のこれまでは目に余るものがあり過ぎた」


お義父さんは淡々と話してくれているけれど
ここまで聞いたことだけで
私でも破門は免れないと思ってしまう


「長女が仮病なのも数年前から掴んでいたこと
千色ちゃんは長いこと辛い思いをしたな」


お義父さんの声が優しくて
長い間堪えてきた“我慢”という錘が
涙と共に落ちた