フェンスに触ると流れ込んでくる記憶に俺は驚いて手を離した。
「どうしたの?」と蒼司に訊かれる。
「思い出しそうなんだ…」俺が言うと、二人は驚いた顔をした。
「もうちょっと、フェンスに近付いて?」俺が言うと、蒼司はフェンスに近寄った。
「ありがと。」俺は言ってフェンスに触れた。
流れて来るのは、俺が死んだ日の記憶の数々。正直、幽霊なのに吐き気がした。片手で口元を押さえる。
「兄さん。手、離して!」蒼司に言われ手を離すと、二人はフェンスから遠ざかった。
「どうした?」俺が訊くと、
「兄さん。思い出すのやめて…」と祐司が言った。
「どうして?」
「兄さんが辛そうだったから。」と祐司は悲しそうに言った。