「わかっただろ。てめぇらが聴いたのはこのグレイスの歌声だ」
「すごい……」

 思わずそう声が出ていた。
 まるで、あのオペラ「魔笛」の「夜の女王のアリア」のような美しい歌声に衝撃を受ける。

(そうか、昨夜もこの子が鳴いていたんだ)

 グレイスと呼ばれた白い小鳥。きっとあのときグリスノートとこっそり会っていたのだろう。この船と連絡を取り合っていたのかもしれない。

「それにしてもグレイス、やっぱお前の歌は最高だぜ」

 グリスノートがその小さな身体に頬擦りするのを見て、その溺愛ぶりに驚く。グレイスの方も嬉しそうにそんな彼に身を寄せている。

「グレイスたちコロコロドリは大昔から"セイレーンの歌声を持つ鳥"と言われていてな」

 それを聞いてぎくりとする。

「だが俺は、そのセイレーンの歌声を聴いたことがねぇ。ブルーの仲間たちもだ。だからこのグレイスの歌声とセイレーンの歌声がどれほど似てるもんなのか俺たちは知らねぇんだ」